マイナー病気録

思えば病院とは縁の切れなかった人生。こんな感じで向き合ってきました

喘息:30年前、タバコが無かったら?

スモーカー天国だった1990年代

 松嶋菜々子さんが主演の1996年放送のNHK朝ドラ「ひまわり」が、夕方リバイバル放送されていますね。デビュー作らしい初々しさ、と言えば聞こえは良いですが、「え!」と目を見張るほどのぎこちなさです。ゴメンナサイ。

 あの松嶋菜々子も、成長前はこうだった・・・共演陣におんぶにだっこの時代があっても、ちゃんと技術を習得して押しも押されもせぬ人気女優になっていったんだなと、感慨を覚えました。

 彼女は朝ドラ100作目の「なつぞら」でヒロイン(広瀬すずさん)のお母さん代わりの役を演じていたはず。月日が流れるはずです。失礼ながら広瀬さん始め最近の若手の上手さを見てしまうと、昔はのんびりヒロインを育てる余裕が作り手にも視聴者にもあったのだろうと思ったりします。

 そんなことを考えたのは、松嶋さん主演の「ひまわり」の舞台が1991年だったと知ったからです。この↓記事を読んだので。

gendai.ismedia.jp

 私がバイトという立場でなく、正社員として働き始めたのが1990年。(そうか、あの時代背景の中で私も社会人として働き始めていたんだ。周りにずいぶんと、本当にかなり、助けられていたよね)と、当時に思いを馳せたのですよね。

 それで、この記事の中でも書かれていますが、本当に90年代というのはタバコが野放しだったもので、苦労しました。

1991年舞台のドラマでは、みんな吸っている。会社の給湯室で、ヒロインの同僚の女子社員が吸っているし、大事な面談のときも上司は吸っていたりする。平成3年はまだ、昭和テイストの時代だったな、とあらためておもう。2022年から見ると、あちこちで「野蛮」である。

 仕事をしながらタバコを吸う人はあちこちにいて、社内の風景として当たり前でしたよね。タバコ部屋で仕事のアレコレが決まってしまうので、話に入れてもらうために喫煙を始める人が同期にも多かった印象です。上司以外の先輩とも広くお近づきになれる、社内ネットワークを構築するには絶好の場がタバコ部屋だったのです。

 その代償に、ものすごいヘビースモーカーになった人もいました。(いっぺんに何本咥えているんだろう!やりすぎじゃない?)と声には出さなかったけれど、すれ違いざま見かけて思わずコチラが息を飲む(2つの意味で)ような人もいたんですよ。マンガみたいでした。

 私は体質的に喫煙は無理なので、タバコを咥えたこともありませんでしたし、今でもそうです。あの頃は、上司に相談に行くと、物を考えながら火の着いたタバコを私の目の前に差し出して長考されてしまうので、むせて苦しくて苦しくて・・・😢

 入社当初の配属先の地方にいた頃は、自分の権限でその室内の喫煙を禁止できたり、上司でタバコ嫌いの人がいた(神✨)時期もあったので、まだ助かっていました。でも、東京の本社勤務になってからは、社内に逃げ場が無く、冗談でなく5メートル先の天井が紫煙で見えないくらいでしたから、悲惨でした。

 前も書いたように思いますけれど、社の産業医に「咳が出て苦しい」と相談したら、毒々しいピンクの舌下錠を口に入れて予防するように言われるだけでした。舌をまっピンクにして1日過ごしていましたけれど、全然効きませんでしたね、あの薬・・・。

 喘息の発病は1998年。タバコが喘息に悪いことを主治医は何度も診断書に書いてくれましたけれど、ヘビースモーカーを絵に描いたような部長は読む気が全然無く、毎回渡した診断書をそのまま不機嫌さ丸出しに横の箱に放り込むだけ。人事部に相談しても「副流煙」なんて言葉があったかどうかの時代に、真面目に取り合ってくれているようには見えませんでした。

 何しろ社内では吸っている人たちが大半なので、ぐちゃぐちゃ言われたくなかったんでしょうね。産業医も「あなたが辞めるしかない」と言いました。無力でした。

 結局、2003年にその会社を離れて療養することになりましたが、皮肉なことにまもなく社屋が立て替えられて新しくなり、ピカピカの壁や天井を汚さないために室内が禁煙になった(!)と聞きました。

 (人間のためには禁煙にしないのに、建物を汚さないためならするんだな)と、誠に日本らしい物の考え方をする会社だと思いました。カレル・ヴァン・ウォルフレンさん著の『人間を幸福にしない日本というシステム』が人気だった頃でした。

 時代の変化もあったと思いますね、徐々に健康志向でタバコを止める人も増えてきましたし・・・あともう少し頑張れたら、会社も辞めずに済んだかもしれません。

 とはいえ、私の呼吸器は限界でした。意地を張っても仕方なかったというか、そんな余裕も無かったです。それに、会社を辞める原因になった病気は、喘息だけではなかったので・・・甲状腺も、腹部の手術のこともありました。ひどい回転性のめまいも。

 でも、人間は部品ごとに独立している存在でも無ければ、一部品を取り換えればチャっと直るようなものではありません。もっと複合的。だから、次々と病気に見舞われるようになっていったベースには、基礎体力を奪っていった最初の喘息があったと私は感じているんですよね・・・タバコのせいだ、と。タバコさえなければ、と。

 未だに持病について話をすると他人に引かれてしまうぐらいですが、まあ、毎日起き上がり、それなりに楽しく過ごせるようにはなりました。あの頃は年間5~6千人は喘息の発作で死んでいたのに、ちゃんと生きながらえたのです。良かった、大したものだと思うことにしましょう。

 でも、もしも30年前にタバコがあんなに吸われて無かったら?私はもっと働けていたんじゃないのかな?仕事の上で、どれだけ成長できていたろう・・・そう思ったりもします。ちょっと残念です。