今日も夏真っ盛り、暑かったですね。
朝、目覚めた時にめまいが無いのは、本当にうれしいですね。瞼を開ける瞬間に「目が回っていたらどうしよう」と、めまい持ちの方々はご心配じゃないですか? 私も、未だにこわごわ、ちょっと覚悟を決めて目を開けるようなところがあります。
そう思うと、1年前は大変だったな・・・回転性めまいが治まらないさなか、遠方の専門外来に通っていた日々。コロナ流行もあったから遠慮がちに。嘔吐が続いて体力的にもフラフラだし、熱中症寸前の状態で、外出先で倒れてご迷惑を周囲にかけたらどうしよう・・・なんて心配をしていました。
まあ、到着すれば点滴して、ちゃんと帰れるようにしてもらえるんですけれどもね。
こういった対症療法のめまい止めの点滴は、もちろんどこでも標準的にしてもらえると思うんですけれど、ずっと「メニエール病だ」と診断されてきたので、根本治療は無理なんだ、私のめまいは一生続くと思いこんできました。
それが、私の回転性めまいの場合は、抗ウイルス薬で治るタイプだったことは、回転性めまいとサヨナラ?私の場合 - マイナー病気録 (hatenadiary.jp)で触れました。
ラムゼイ・ハント症候群(耳性帯状疱疹)なんて、しかも不全型なんて、生まれて初めて知りましたよ。続きを書こうと思います。
ハント症候群について、ちょっと難しい論文の話
ハント症候群については、たぶん第一人者だと思われる名古屋市立東部医療センター病院長の村上信五さんと、もうお一人との共著の2000年の論文「ハント症候群非定型例の早期診断」(_pdf (jst.go.jp))の「はじめに」でこんなことが書いてありました。
ハント症候群は
を伴う疾患群で、膝神経節に潜伏感染した帯状疱疹ウイルスの再活性化により生じる。
3つの代表的な症状があるそうです。さらに・・・
上記3症状がすべて揃うものを【完全型】、帯状疱疹あるいは第8脳神経症状のどちらか、あるいは両方を欠くものを【不全型】と称している。
完全型は約6割しかなく、また、症状発現には時間的なずれがあることが多く、ベル麻痺との早期鑑別診断は必ずしも容易ではない。
抗ウイルス剤とステロイド剤の早期治療が有効であることから、ハント症候群非定型例の早期診断は重要である。
上の引用文中の箇条書きや改行、【】の設定は私がしました。読んで気づいたのは、基本に「顔面神経麻痺ありき」がドーンとあることです。完全型、不全型でもまず顔面麻痺、といった捉え方。お医者さんにとってハント症候群と言えば、「顔面麻痺の病」なんですね。
7月19日に「参考」としてご紹介した「ラムゼイ・ハント症候群の初期診療のポイント(アドバイザー 村上信五 名古屋市立東部医療センター 病院長/名古屋市立大学 耳鼻咽喉科 名誉教授)dn04.pdf (maruho.co.jp)」に載っているチャート(図2)も、まず「顔面神経麻痺」からスタート。
次に「難聴、耳鳴、めまい」が来て、それがイエスだったら「帯状疱疹(耳介、口腔)」のイエスかノーかを選択する形です。
ここでイエスなら「ラムゼイ・ハント症候群」で決まり、ノーなら「耳痛」があるかないか。「耳痛」がイエスの場合は「ハント症候群」または「耳炎性」という流れです。
それじゃ、まあ仕方なかったんだな・・・と思いました。「顔面麻痺からハント症候群が始まる」との前提というか認識があるのだから、20年にわたって耳鼻咽喉科のお医者さん方に診てもらう機会があっても、顔面麻痺の「が」の字もなかっためまい患者の私には、誰も耳の痛みや発疹の有無なんか尋ねませんよね。
これまでの私の症状は、まず回転性めまい。それ以上もそれ以下もなかった感じです。その前後に左耳が赤く腫れて、内も外も触るとイタタタと飛び上がる感じになり、発疹の方も耳介付け根あたりや耳の内側、口内炎も出てきていましたが、めまい以外はどうだっていい、くらいの感覚でとらえていました。
めまいの惨憺たる状況に比べたら・・・でした。それに、別の病気でしょ、と思っていましたからね。
その顔面麻痺について、実際に、今年の3月に左耳の付け根の発疹を伴う回転性めまいが少しぶり返した時に、注意して観察しました。確かに顔の左半分だけが、皮1枚上にかぶったような、フカフカして温かい変な感覚があったので「顔面麻痺の兆候?」とゾッとしたのでした。
でも、そのフカフカ違和感も、注意していたから気づいた、といった程度。全然問題には思いませんでした。
私と同じ、顔面麻痺のないケースを論文で見つけた
ググった論文の中に、私のように顔面麻痺のないケースが報告されているものを見つけた時は、「おお!やっぱりあるんだ!」と感激しました。
2012年の論文「激しい回転性めまいと嘔吐で発症した不全型Ramsay-Hunt症候群の1例」(ja (jst.go.jp))という、防衛医大小児科の中村康子さん、松本浩さん共著のものでした。
6歳の女の子が、まず耳の痛みを感じ、5日後に激しい嘔吐と回転性めまいが出現、9日目に耳介に水泡(帯状疱疹)を経験したケースが、論文では報告されていました。
わー、これこれ。似てますよ、私のと。
典型例では3徴候すべてがそろうが、帯状疱疹と第8脳神経症状を欠くものや、稀ではあるが顔面神経麻痺が非常に軽い症例の報告がある。典型例であっても必ずしも同時にすべてが認められるとは限らず、診断には注意深い臨床症状の観察が必要である。
引用文中のアンダーラインは、私が引っ張りました。
この女の子は、最初に左耳が痛くなって、軽度の難聴も出ていたのが改善に向かっていたところ、めまい嘔吐に襲われたんですね。つらかったね、まだ小さいのに。回転性めまいが持続していたから寝たきりの状態だったと・・・うんうん、本当に可哀そうです。
今や日本国民おなじみのPCR検査の結果、VZVというウイルスが陽性だとわかって、抗ウイルス薬のアシクロビルの点滴を入院の日から7日間続けたそう。
めまいの自覚症状は入院翌日には消えたけれど、眼振はあり(これも私と近い感覚)、ステロイド(プレドニゾロン)の点滴も開始。入院5日目にはめまいと眼振は消えて立てるようになり、8日目にはステロイド中止、10日目には無事退院を果たしたそうです。良かったね、女の子ちゃん・・・!
「考察」では、原因について
主に前庭神経節および迷走神経節に感染したVZVの再活性化によりめまい、耳痛、耳介帯状疱疹の症状が出現したと考えられた
と書かれていました。さらに、考察の締めくくりには
本症例も、入院時、激しいめまいと嘔気のために起き上がることや食事摂取が困難であったが、アシクロビル(注・抗ウイルス薬)、プレドニゾロン(ステロイド)による治療後は症状がすみやかに改善し、臨床的に治療効果があったと判断した。
急激に発症した回転性めまいについて、顔面神経麻痺を伴わない場合でも、ラムゼイ・ハント症候群を鑑別診断の一つに考える必要があり、耳介部の帯状疱疹の有無について、注意深い観察が必要であると考えられた(英字はカタカナにしてカッコ注を付けました)
とありました。あー、まるで自分のケースを読んでいるようですよ。
めまい患者が抗ウイルス薬を気軽に試せたら
私やこの女の子のケースは稀だったのかもしれませんが、でも、もしかしたらメニエールとの診断を受けているめまい患者の中にも、私のように不全型ハント症候群でわかりにくいケースが隠れているのではないかしら?と思います。
そういった方たちが、試しに抗ウイルス薬での治療に気軽にトライできるようになるといいのにな、と思います。
なにしろ、最初は自費でのスタートでしたからね・・・ちょっとためらいますよ。変な治療なのかもしれないと思いますよね? 耳の帯状疱疹とわかってからは保険が使えての治療でしたが。
なんでこんなことになってるのかな、と思ってググったら、「日本めまい平衡医学会」の公式サイトの中に、「メニエール病のゾビラックス治療に対する見解」と題した声明文のようなものを昨年見つけました。
今日になってまた確認のために見てみたら、サイトもリニューアルされ、その文書も削除されていたようでした。(| 日本めまい平衡医学会 (memai.jp))
内容は、メニエール治療に抗ウイルス薬を使うなんてとんでもない!といったものだったと記憶しています。あわわ、となりました。
めまい専門医の団体がそうおっしゃるんじゃ、うっかり「抗ウイルス薬を試したい」なんて口にできませんよね・・・(;^_^A
でも、削除されたということは?もしかしたら???道が開けるのかもしれませんね。
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